お茶と人が共に暮らす
京都府南部にひっそりと位置する和束町(わづかちょう)は宇治茶の郷として知られ、宇治茶の約半分を生産する最大産地です。鎌倉時代から脈々と受け継がれ、生活とともにあるその生業の茶畑景観は素晴らしく、京都府景観資産の登録第1号、「日本で最も美しい村連合」への加盟、「日本茶800年の歴史散歩」として日本遺産にも認定されるなど、京都を代表する茶産地として独特な空間が評価され、現在では茶源郷和束と称されています。
和束町は、京都府の南の端、奈良平城京と宇治平等院とのほぼ中間に位置し、 緑豊かな山腹に茶畑が広がる宇治茶の主産地です。京都、大阪から約1時間と少し、奈良からは30分程度の位置にあります。 都会からほんの少し足を延ばせば、大切に育まれてきた茶畑の雄大な景色と、幻想的な森林風景が織りなす、神秘的な異世界空間を感じられる場所です。
この美しい風景は、山あいの傾斜地や丘陵の上など、辿り着くのも困難な土地を先人が手鍬で開墾した賜物です。茶畑の畝(うね)は山の斜面に沿って美しく刈り込まれ、芸術作品さながら。人の手がつくりだした茶畑と暮らす家々が共存する、和束町ならではの「生業景観」です。和束町の茶生産に適した地形と自然環境、そして茶をはぐくむ人々の手の両方によって、世界に誇る「和束のお茶」と、四季折々、息を呑むような美しい景観がかたちづくられています。
和束町の東に位置する湯船エリアは、かつて上質な杉やヒノキを生産する林業がとても盛んな町でした。林業従事者が樹木と真面目に向き合い上質で真っ直ぐな木材を育ててきた誇りから、当時に建造された湯船エリアの家屋は立派な柱や梁を使用し、現在でも趣ある日本家屋が建ち並んでいます。 また、渓谷のような地形の両面に広がる豊かな森林が幻想的な空間を作り出し、市街地では見られなくなった動物や虫、植物が多生する希少性を大切に活かし、現在では湯船森林公園として川遊び、フィッシング、マウンテンバイクといった広大な森林アクティビティエリアへと変化を遂げています。